2010/04/22

起き上がりこぼし再び

夏日から一転、冷たい雨。
着て、更に着て、街に出る。

起き上がりこぼしのような格好にうんざりしながら、漸く手元に届いたベストセラーの三巻目の頁を、ゆっくりと慌てず、急がず、繰っている。

その中にマルセル・プルーストの『失われた時を求めて』に関するくだりがあり、“刑務所に入るか、どこかに長く身を隠すような機会でもないと、それを読み通すことはむずかしい”というようなことが書かれていた。
私はぼんやりと、かつてのアメリカでの生活をおもいだした。
アメリカでの生活は、もちろん、刑務所に入るのとも違ったし、身を隠すようなものでもなかったけれど、プルーストを読むのにはうってつけのようにおもえた私は、わざわざそれをスーツケースに放り込んで持ち込んだのだった。
しかして、アメリカでの生活は、刑務所に入るのとも違い、また、身を隠すようなものでもなかったからなのか、結局私は、プルーストを読み通すことはなかった。
読み通すどころか、「スワン家のほうへ」で早々に脱落した、というのが、ほんとうのところである。
間違いなくその年は、それまでの人生で一番多く本を読んだ一年であったから、私が今後プルーストを読み通す可能性は、極めて少ないであろう。
それこそ、刑務所に入るか、長く身を隠すような機会でもない限り。

明日もこの陽気が続く、という。
二の腕だの肩だのの皮膚を布で覆わずとも外に出られる、そんな季節が待ち遠しい。

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