
『女優 岡田茉莉子』読了。
50年代以降の日本の映画史を振り返ることにも等しいその読書体験は、非常に幸せなものだった。
読了に先だって、自伝上梓を記念しての回顧上映で、『情炎』を観、その際幸いにも、ご本人にお会いする。
小津安二郎監督の『秋日和』『秋刀魚の味』で“岡田茉莉子”を知り、吉田喜重監督の『秋津温泉』で魅了されて以来もっとも敬愛する女優を目の前に、わなわなと震えが起こるほどに緊張。
ちなみにその日は、ご主人でもある吉田監督もいらしており、上映後のトークショーでお話も伺うことができた。
自伝により初めて知ったのだが、カズオ・イシグロの『遠い山なみの光』を、吉田監督が映画化する、という話があったのだという。
イシグロ氏の同意も得られ、岡田茉莉子主演のほか配役やエジンバラでの撮影も決まり、クランク・インまであと5日、というところで突然の制作中止に追い込まれたのだそうだ。
カズオ・イシグロ×吉田喜重×岡田茉莉子、垂涎の組み合わせに、「たら・れば」のもどかしさを感じる。
その後、吉田監督が同じ原爆をテーマにした作品『鏡の女たち』を撮っていることや、お二人の年齢を考えると、これから先の未来に、それが現実のものとなることもおそらくないだろうとおもわれ、もどかしさがよりいっそう極まる、晩秋の候。
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